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た食道ヨード染色検診では0.4〜0.7%である7)。これらの成績と比べると大酒家の食道ヨード染色による発見率は驚くほど高い。この21例から36ヵ所の食道癌病巣を診断した。1人の患者の食道に2ヵ所以上の癌が発生したものを多発食道癌というが、57%の食道癌が多発食道癌であり、多発発癌率は一般の3〜4倍の頻度であった。17例は内視鏡的粘膜切除で治療した。81%の癌患者で食道癌は上皮層ないし粘膜層に留まっていた。

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濃い酒と30本以上の喫煙でリスク上昇検診前の1年間に最も好んで飲んだアルコール飲料の種類と喫煙本数と食道病変との関係を右表に示した。食道ヨード不染帯と食道癌とも、濃いアルコール飲料の飲酒家でより多く発見され、喫煙では1日に30本以上吸う人で、発見率は急上昇した。多重ロジスト解析という方法で年齢軸や飲酒量の影響を除外すると、食道発癌の危険性の指標であるオッズ比は、ウイスキー・焼酎は日本酒・ビールに比べ2.94倍、喫煙は1日30本以上は30本未満の3.85倍であった。

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飲酒家の食道癌患者にはアルデヒド脱水素酵素2欠損が多い8)
欧米では食道癌の危険性の90%以上が飲酒または飲酒と喫煙の組合せに関係しているとされ、飲酒量の多い国で食道癌死亡が多いのは理解できる。しかし、アジアの国では、ウイスキーのような濃い酒はそれほど好まれず、多くのアジア人はアルデヒド脱水素酵素2の遺伝的欠損により飲酒量も少ない。しかし、ホンコン、シンガポール、日本の食道癌死亡率はかなり上位にランクされる9)。
アルコールはアルコール脱水素酵素により、アセトアルデヒドになり、さらにアルデヒド脱水素酵素(ALDH:aldehyde dehydrogenase)により酢酸へと変化する。ALDH

 

 

 

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